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2011/6/30(再投稿) 倉内のおかん伝説の巻

2020.05.06
マロ栗山

マロじゃ。今回は私がこれまで生きてきた中で出会った数々の人物の中でも、特に印象に残った人物を紹介していこうと思うておる。まあ私の印象に残る人物じゃから、キャラクターの特異さは折り紙付きの者達ばかりじゃ。そのような数ある豪傑の中、このシリーズ第一回として、倉内のおかん、確かミネさんじゃったかのう、を推挙したい。

 


OWF往年のレスラー、ストロング倉内は私の二年後輩であり、会長ならびにヘビー級チャンピオンにもなった名選手じゃ。迷選手と言うた方がしっくりくるかのう。奴はお笑いには貪欲な男で、普段の生活でも随所に独特のセンスを感じさせる、こやつも充分、はたから見れば特異な輩なのじゃが、さすがはこの子にしてこの母ありと言うべきか、奴のおかんの特異さは倉内を遥かに凌ぐ程の逸材じゃ。私の乏しい文才では、その逸材ぶりを詳細に書き連ねる事がままならず、誠に口惜しくてならぬ。実際に鑑賞していただくのが一番なのじゃが、それも現実的でない為、私の体験を交え何とかその逸材ぶりの一端のみでも紹介してみせる故、諸兄らも汲み取っていただきたい。

 


私が現役生の頃、神戸は大倉山の倉内邸を訪れる事が度々あってのう。奴の部屋は三階にあるのじゃが、行くには奴のおかんが居住するテリトリー、二階のど真ん中を横断せぬと行けなくてのう。

そこでは常に横になる、というかほぼ寝たきり状態でヘッドフォンを装着し、テレビに熱中する倉内のおかんを目撃する事が出来るのじゃ。私の記憶ではテレビはいつも野球か漫才じゃったのう。ヘッドフォンを付けておる故、辺りは静寂を保っておるのじゃが、時折何やら笑い声が静寂を破り、非常に不気味じゃったわい。倉内邸に半日程滞在し、帰る際に今一度、奴のおかんを確認すると、私が訪れた時確認したのと全く同じ位置にて、同じようにテレビを見ておったのには驚愕したわい。半日もの間、微動だにせなんだとは、まさに動かざる事山の如し。戦国武将を地で行く倉内のおかん。この豪気で、先の阪神淡路大震災も乗り切ったと思うと何やら目頭が熱くなったわい。

 

しかしながら何より倉内のおかんが強烈な所は、柔らかい物腰での口調から吐き出される毒のある言葉じゃ。表情と台詞が一致しておらぬその毒舌は、私を幾度となく窮地に陥れたものじゃわい。

 


とある日、倉内邸にて、もよおした私は厠に駆け込んだんじゃ。厠は二階の倉内のおかんのテリトリーのすぐ側にあり、私も気が引けたんじゃが、一刻を争う事態故駆け込んだ。前述したように、倉内のおかんは常にヘッドフォンを標準装備しておる故、多少音が漏れようが気付きはせんじゃろと踏んだ私はさっさと用を足し、すぐさまテリトリーからの脱出を計るべく厠の扉を開いたのじゃ。すると・・・、

 

 


先程まで心ここにあらずといった感じで、トランス状態にてテレビに没頭しておった倉内のおかんが一変、標準装備のヘッドフォンは外され、穏やかな表情にて私の方を向いて一言、

 

「トイレ汚してくれて有難う。」

 

 

 

 

このような事例もある。とある日に、やはりレスラーたるもの飯を沢山喰らわないといかんと一念発起した私と倉内は、昼飯に倉内邸近くのお好み焼きの「桃太郎」、前回登場したラーメン店「神戸とんこつ亭」をはしご。倉内邸帰宅後には倉内のおかんに買って来ていただいた、神戸の名店「フォンテーヌブロー」のケーキを二人で9個。とにかく喰らいまくったんじゃ。当然我々の胃はとうに限界を越えておった。もう食い物は見たくもない状態で、晩飯は不要じゃと思うたその刹那・・・、

 

 


晩飯と称し、倉内のおかんが、魚介類のふんだんに投入された巨大な鍋を持ってきおった。普段ならとても美味そう、いや実際美味いんじゃろうが、その時の我々には悪魔の汁に見えたわい。明らかに確信犯的な陰謀が見え隠れしておったのじゃが、せっかくの料理を残すは大変失礼にあたる故、生きた心地はせぬ状態じゃったが一心不乱に喰らい続けた。まさにブロイラー状態の私と倉内。もう腹は勿論、心も折れる寸前だったのじゃが、とどめにビールが振る舞われ、この援護射撃が決め手となり我々は轟沈。半分以上回収不能の最悪の事態となってしもうた。

 

 

そして、闘いに敗れ、満身創痍の我々に浴びせ掛けられた倉内のおかんの一言。

 

 

 


「たくさん残してくれて有難う。」

 

 

 

この一言は、私の心に深い傷痕を遺した。未だにその際のヴィジュアルが脳裏に焼き付いて離れぬわい。これが巷で言う所のトラウマというやつかのう。
恐るべし、倉内ミネ。それから、このコラムを執筆しておる今に至るまで、未だ私のリベンジは果たされておらぬ。

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